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濡れて堕ちて……
第1章 孵化
 
それでもお腹は空くのだから


出来た料理を食卓に並べる。



肉じゃがにポテトサラダにお漬け物。


テーブルに並べてるとお風呂から出て来た浩一が椅子に座り煙草に火を着ける。

8年も連れ添えば何となくオーラでわかる、拗ねて何も喋りたくないオーラ。

このオーラが嫌で何度逃げ出したくなったか…。

「…とりあえず、食べよっか」


せっかくの晩ご飯、こんなお葬式みたいな雰囲気で食べたくない、無理に笑顔を作るけど浩一からの反応はない。


「ご飯食べる前に煙草なんか吸ったらヤニ臭くなっちゃうよー?」

「………………。」

「…今日の肉じゃがは美味しいよー!スーパーに勤めてる特権よね!ちょっと高めのお肉が割り引きで安く買えたの!」

「…………………。」



ダメだ、耐えられない。


「そんなに腹が立ってるなら別室に行ってあげようか?」

こんな重苦しい空気で食事なんか出来ない。

それでなくてもお昼も食べた気がしないのに。


「何で別室に行く訳?俺が嫌いなの?一緒にいたくねぇなら好きにすれば?」

「……別に、そんなんじゃ」

そーいうところは返事するんだ…。

後は黙々と食事をする音、食器がテーブルにふつかる音がリビングに響く。

もう慣れっこだけどね、こんな空気。



「ごちそうさん、悪いけど、俺このサラダ嫌いだから」

「え、ちょ、ちょっと…!」


そー言って当たり前のようにポテトサラダをゴミ箱に捨てる。

私が引き止める前にゴミ箱に丸々に近いまま。
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