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濡れて堕ちて……
第7章 淫獣
誰…?

今目の前にいるこの子は誰?

あぁ、きっと私はまだ夢を見てるんだ、そうだ、そうに決まってる。


徹がこんな事するはずがない。

こんなバカげた事をする子じゃ─────

「すいません。“優しくて紳士的な徹君”はもういないんです」











私ノ知ッテル徹ハ…

コんナ事ヲスル子ジゃ───────






「んっ、んぅぅっ」

ベッドに押し倒されたと同時に徹の唇が重なる。


私の知ってる徹のキスじゃない。


舌を絡ませるように、私の口内を犯して行く。

息も出来ず徹の唇から逃げようと顔を反らそうとしても、徹の手が私の顎をがっちり固定していて動けない。


ダメ、ダメッ!


「いっ…つぅー…」

私の口内に鉄の味が広がる。



徹の唇から逃げたくて、でも顔を掴まれて動けなくて

私が出来る唯一の抵抗だと思い、徹の下唇を力任せに噛んだ。

恐らく、微かに出血させてしまったと思う。



「あはは、何するんですかぁ? 」


「変態!!最低!!あんたおかしいっ!!イカれてんじゃないのっ!!さっさと首と足の鎖はずしなさいよ!!」



徹の体の下で目一杯叫んだ。

そんな私を、まるでバカにするように薄ら笑いを浮かべている。


「ひっどいなぁ、陽子さん。あんなに俺の事好き好き言ってくれてたのに」


私が好きだったのは

私が癒やされてたのは


「私が好きだったのは優しい徹よ!!あんたなんかじゃない!!こんな人だったなんて…」


これがあの優しかった徹だなんて思いたくなかった。

徹にそっくりな別人だと思いたかった。


すると、私の体から離れた徹はベッドを下りてポケットに忍ばせてたんであろう煙草に火を付けフゥッと一息。
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