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濡れて堕ちて……
第8章 甘美
ベッドから下りて、扉に近づいてみた。


足に絡まってる鎖がジャラジャラしてて重い。

見るからに頑丈な扉。

まるで犯罪者を閉じ込める為に作られてような鉄の扉。

ノブをガチャガチャ回してもびくともしない。

ドアって、普通は内側に鍵が付いてるはずなのにこれには鍵が付いてない。

徹が外側からかけれるように改造したんだろうな。

開いたとしても足に巻き付いてる鎖で出られないけど…。



もし、これが普通の賃貸マンションなら徹のやってる事は違法建築に該当するんじゃない?

と、そんな事をぼんやり考えていると




ガチャッ

目の前の重そうな扉が突然ゆっくり開いた


ギィッと重たそうな音を立てて、開いた扉には


「あ、起きてたんですか?おはようございます」

徹がいた。



美味しそうな香りと共に。



「そろそろお腹が空く頃かなぁと思って。陽子さんの好きなものばかり用意しました。コーヒーにスクランブルエッグにサラダに…」

そう言いながらテーブルの上にトレーを置いた。


空腹だけど、でも…


「今何時?何曜日なの?」

「そんな事気にしなくてもいいじゃないですか?ここにいる限り関係ないんですから」



確かにここには時計もカレンダーもない。

時間も曜日も関係ないかも知れないけど、せめて外の様子が知りたかった。

諦めたようにストンッとベッドに腰かけた。
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