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濡れて堕ちて……
第8章 甘美
すると、徹がいきなりソコから離れた。

その状態のまま赤く染まった私の顔を見上げて

「陽子さん、ゲームでもしましょうか?」

「ふぇ…?」


不敵な笑みを浮かべながら突飛押しのない話を振って来たのだ。


この状況で、一体何のゲームをしようと言うのだろうか。

マトモなゲームじゃない事は明白だけど。



「3分間、声を我慢出来たらここから解放してあげます」


徹が仕掛けて来るゲームだ、こんな事だろうとは思ってたけど



解放という言葉に私の頭は反応した。



「……本当に?」

「約束します。ただし少しでも声を出したら陽子さんの負けですからお仕置きが待ってますけど」



お仕置き?

その言葉の意味が怖い。


こんなバカげたゲームなんて普通なら断りたいところだ。

負けた時のお仕置きも怖いし、徹がどんな攻めを仕掛けて来るかもわからない。


でも

少しでも逃げれるチャンスがあるなら───────



「本当に…逃がしてくれるのね?」

「もちろんです」



今は

0に等しい可能性でも

その僅かな可能性にでも賭けたかった。



「わかった。…約束を守ってくれるなら」

「決まりですね」



そう言って、徹は自分の腕から腕時計を外し

何やらピッ、ピッと電子音をたてながらタイマーの準備をしている。




引き受けたはいいが、正直自信なんてない。

何をされるかわからない恐怖で心臓も限界に近づいている。


でも、3分間

3分間我慢すればこの地獄から解放される。

大丈夫、3分なんてあっと言う間だ。


腕や足の痛みに意識を集中させればいいんだ。

壁や天井の染みを数えてればいいんだ。

大丈夫、大丈夫。




私が自分にそう言い聞かせていると

徹はタイマー設定をした腕時計をコトッとテーブルに置いた。

3分経てばアラームが鳴る、それまでの我慢だ。





しかし、こちらを振り向いた徹の顔は

また良からぬ事を考える

あの悪魔の顔になっていた。




私の頭の中で

警告音が鳴り響く。




まさか、私は

知らぬ間に

またこの悪魔に騙されてるんじゃ?





 

「この勝負、陽子さんの方が断然有利ですからハンデはもらいますよ?」












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