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濡れて堕ちて……
第9章 悪夢
「早く着替えて下さい。連れて行きませんよ」


それでも、少しでも外に出たかった。

だから─────────




何度も私の体を抱いてるからか

徹が選んだこの服は私の体にぴったり馴染んだ。

私の体のサイズも全て知り尽くしてるって事か…。


久しぶりに素肌に触れた衣類の感触。



この世に戻って、生き返ったような心地がしたけど

「やっぱり、よく似合ってます」

徹の声で現実に引き戻される。



「行きましょうか?俺が安心するまで鎖は付けさせてもらいますね」

足に鎖を付けられ、まるで犬の散歩のように徹に鎖を引かれてる状態。

情けない、情けないけど……。




何日かぶりに外に出られる。



初めて、この部屋を出られる。



キィッ…







部屋を出ると、そこは…

普通のマンションの廊下だった。


「ここは…?」

「新しい引っ越し先って言ったじゃないですか?」


まさか、本当に普通のマンションだったなんて。

普通のマンションの一室をあんなふうに改造したんだ。

廊下を見る限り、以前のマンションに比べてグレードアップしたというか

家賃の高そうなところだ。





ふっと、ある考えが浮かんだ。

血迷った考えだけど





台所に行けば包丁がある。

今、徹に体当たりして

怯んだ隙に逃げられないだろうか。




包丁で脅せば────────。






心臓が脈打つ。



「逃げようなんて考えないで下さいね」






ハッ!!



振り返った徹の目

全てお見通しと言う目だ。







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