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濡れて堕ちて……
第10章 代償
薄れ行く意識の中、徹の声が聞こえた。



私はまだ浩一を忘れてない。

徹の言う通り、こんなにも浩一が恋しい。

今すぐにだって飛んで行きたいぐらいだ。





思い出すのは浩一との日々。

面倒臭い時もあったし

何度喧嘩して泣かされたことか。


でも

それでも私は浩一と生きてきた。


浩一と毎日を生きてきた。



こんなふうにじわじわ痛めつけられるなら

こんなふうに真綿で首を絞められるような思いをするくらいなら

これが浩一を裏切って来た罰だと言うなら



お願いです、神様



いっそのこと、このまま殺して下さい。





浩一以外の男に抱かれ

いたぶられるぐらいなら

いっその事、一思いに…。














「ん…?」

目覚めるとそこは、いつもの監禁部屋。


またここか。

この展開にも慣れたもので今更驚きはしないけど

「ん、ん?」

体が動かない…。



いつも目覚めた時に思うのは自分が今どんな状況に置かれてるのか、だ。

いつかは天井から吊されたり

いつかはベッドに拘束されてたり


マトモにベッドに横たわってたなんて数えるぐらいしかない。


今は…


産婦人科の分娩台のような椅子に座らされてる。

足は開脚状態で固定されて、腕はひとまとめにされて頭上で固定。

口にはあの、穴が空いたピンポン球サイズの玉がついたマウスピース。


……目覚めた瞬間、こんなはしたない格好をさせられてるなんて状況にももう慣れた。
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