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濡れて堕ちて……
第10章 代償
浩一の目は


信じられないとかそんな目じゃなかった。


浩一の顔がはっきり見れなかったけど、ショックとかそんな次元の話ではないのだから。

目を見開き、2、3歩く後退りをしたその表情は…。



「言ったでしょ?あなたの奥さんの本性を知るべきだと」


勝ち誇ったような含み笑いを浮かべ、優越感に浸ったような顔で私のもとへ歩み寄る徹。


「どういう…こ、」


こんな状況でどんないい訳が通用する?


「うぅっ!ううぅっ」


マウスピースが邪魔で何も喋れない、けど

浩一の気持ちは言わなくてもわかる。

何も聞きたくはないだろう。


「こういう事ですよ?あなたという亭主がいながら俺に抱かれて悦んでたんですから」



違う、悦んでなんか…

「ううううっ!んぅぅぅぅぅっ!!」


言葉が喋れない今、どうにか浩一に伝えようと必死に首を左右に振った。




でも


「それに奥さん、もうあなたとの結婚指輪外してますよ」




違う、徹に無理矢理奪われたんだと否定したくても

現に私はこんな姿で浩一の前にいる。



浩一からすればどんな言い訳も聞きたくないだろうし、信じてもらえないだろう。

浩一の目は、もう私を捉えてはいなかった。


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