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濡れて堕ちて……
第10章 代償
あ…そうだ、そう言えば。


徹との間柄に疑問を感じたあの喫茶店

徹の気持ちが重いと感じた会話をしたあの日の夜にいきなり浩一にこれまでの事を謝られたんだっけ?


確かに、ドラマか小説のように出来すぎた展開だ。



「あの時、陽子さんが俺と別れようとしてるって表情でわかったんです。だから先手を打ちました。


浩一さんの会社に言って少しだけ暴露したんですよ、陽子さんの不倫話」



先手…?

暴露?

さっきの会話からして、もしかしてとは思ってたけど

やっぱりそう、だったんだ…。



「俺が不倫相手だって事は伏せました。浩一さん、"まさか"って笑って相手にもされませんでしたけど。

でも、危機感でも感じたんでしょうか?随分と優しくなったみたいですね?」



百々のつまり

私も浩一もあの時から

徹の手のひらに転がされてたんだ。


浩一が優しくなったのは

徹が危機感を煽ったからだ。


普通に考えれば疑う余地はいっぱいある出来すぎた話なのに

浩一との毎日が幸せで


気づけなかったんだ。



「本当はあの場で俺が浮気相手だって、全部話しちゃってもよかったんですけどね。中小企業って言ってもそれなりに名の通った会社ですし、それなり貰ってますから慰謝料だって払えます。

でも、そんな事しても陽子さんの心が手に入る訳じゃありませんよね」





だから、監禁して

弄んで

浩一の前で全てをバラしたの?


疑り深い浩一の前で私のこんな姿を見せつけて。



「でも、それでもムカつきますよ?例え策を練ってたとは言え…あの後、何度浩一さんに抱かれたんですか?」
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