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濡れて堕ちて……
第11章 泡沫
でも、寝室だけは別。

私は元々、隣に他人の体温や気配があると眠れない体質で

浩一と結婚した当初、ダブルベッドを購入して

2人で並んで寝てたがしばらくは睡眠不足に悩まされた。

結婚して5年ぐらいしてからだろうか、浩一の気配に慣れて安眠出来るようになったのは。


徹は自分の寝室で眠ってるみたいだけど、私は別の部屋

睡眠時だけは監禁部屋に向かっている。





あの薄暗く異様な雰囲気は今の私にぴったりだから。

暗く日の光すら当たらない。

時計がないぶん、時間すら忘れられる。










「それじゃあ、行って来ます!今日から残業なんで遅くなります。戸締まりはしてて下さいね」

朝、私にそう言って徹は出勤。


台詞だけ聞けば、キッチンで朝食を済ませた夫婦だけど

監禁部屋のベッドで眠気眼の私と、監禁部屋のドアにもたれ私に語りかける徹。

「…行ってらっしゃい」


夫婦でもないけどね。






バタン…

監禁部屋で、あのドアの開閉する音を聞くたびに思い出す。



浩一…。




もう、戻れない


私の愛しい人。




もうどうでもいい。

私と夫婦になりたいと言うならそれでもかまわない。


浩一を無くした今、誰の妻になろうが関係ない。



私の戸籍など好きに書き換えればいいんだ。



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