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濡れて堕ちて……
第11章 泡沫
はぁ、と溜め息を付き一旦リビングに戻ろうとした所



監禁部屋の斜め前。

微かに光が漏れていた。



多分、徹が

ドアを閉め忘れたのだろう、ドアが少し開いていて、そこから日の光が漏れていた。



ここは、多分徹の寝室兼、仕事部屋だ。





ドクンッ




私にはもう帰る場所がない。

ここから逃げたって行く所すらない。

私がどこへも行けないとわかって徹も油断したのか、気が緩んだのか。

こんな大事な部屋を開けっ放しで行くなんて。


抜け目のない徹だから、ここにも施錠はしてるもんだと思ってたけど。





ドクンッ





この部屋に入れたからって何がどうなるわけでもない。

私が乱れ狂ったあの動画だって…、私の醜態を浩一に生で見せつけたのだからもう脅し道具にもならない。

携帯や鞄を取り返したからって、どこへ逃げるわけでもない。

でも…





ドクンッ




私の手はドアノブにかけられていた。






キィーッ…





この部屋に引っ越してから初めて入った





徹の部屋。









中にはシングルのベッドが1つ。

あの頃と同じ真っ黒なシルクのシーツ。


そして、パソコンが置かれた小さなテーブルとクローゼット。


…へぇ、意外にシンプルなんだ。

仕事して、疲れたらすぐに眠れるようにって事かな。

どうやらカーテンが少し捲れており、そこから日の光が差し込み廊下に漏れていたのだろう。



あ…閉めてた方がいいかな?

こんな真っ黒なシーツじゃ熱を吸い込む一方で、この部屋サウナみたいになっちゃうもの。



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