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濡れて堕ちて……
第11章 泡沫

PM21:54。
「寝てくれてもよかったのに」
徹が帰宅。
既に私が眠っていると思ってたのか何も言わずリビングへ入って来た。
リビングのテーブルに作りたての温かい食事をセッティングし
眠らずにソファでテレビを見てる私に驚いたような声をかけた。
何て言いつつ、徹の声は若干嬉しそう。
「おかえり。何か眠れなくて」
眠れる訳がない。
私にはやり遂げなきゃいけない事がたくさんあるんだから。
「残業は?今日から何でしょ?」
「それが上の重役が盲腸で倒れてさ、今日は残業なし」
そう言いながらネクタイを緩め、ソファの背もたれに無造作に放り投げた。
大丈夫、自然にしてればいい。
いつもみたいに不機嫌そうにしてればバレない。
徹にには見えないように小さな深呼吸を繰り返す。
「うっわ!今日は俺の大好きな焼き鮭じゃん!さすが陽子さん!」
大丈夫、徹も機嫌いいみたいだし
いつもみたいに何気ない会話で何かしら、ここから逃げて浩一の元へ帰れるヒントが浮かぶかも知れない。

