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濡れて堕ちて……
第11章 泡沫
な、に?
ドクン……
何を言ってる、の……?
ドクンッ!
「そ、外になんて━━━━━━━━━━━━」
徹の方を見ると
ビール片手に…、あの悪魔のような目を向けられていた。
背筋が凍る。
ドクンッ!
ドクンッ!
「な、何なの?どうして…?」
言葉が上手く出てこない。
その上声が震えてる。
どうしてそんな事を聞くの?
すると、徹はビールをテーブルに置くと椅子から立ち上がり
ゆっくり私の方へ歩み寄る。
「じゃあ…これ何ですか?」
ソファのすぐ真後ろでしゃがみこみ
拾い上げた何か。
それは
今日コンビニで買った即席充電器。
ドクンッ!
ソファの真後ろに落ちていたのだろう、ソファに座っている私からは死角になっていたのだ。
携帯を隠すこと、徹にバレないようにするのに必死になって充電器の存在を忘れていたのだ。
「そ、それは……っ」
ソファから立ち上がり、ゆっくりゆっくり
徹から遠ざかるように後退り。
あんなにバレないようにしようとしたのに
気を付けてたつもりなのに!
「外出してないのに、何でこんな充電器がここに?」
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ……
冷めたような、凍てついたような目。
「これ、俺の使ってる電話会社の充電器じゃないですよね?挿し込み部分も俺の機種じゃ使えない形ですし」
「や、いや……」
じりじりと私に歩み寄る徹。
後ろは壁、目の前には徹が立ちはだかっている。
追い詰められた、逃げられない。
「まさか、陽子さん……」
徹のこの目はあの時の……
浩一と私を罠に嵌めた時の目だ。
何を仕出かすかわからない目。
何かに気づいたように、徹は私から離れてリビングを後にした。
行き先は自分の寝室だろう。
ベッドの下に隠して置いた私の鞄、携帯のチェックをしようとしているのだろう。