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濡れて堕ちて……
第13章 本能

離婚。

そうよ、離婚するには充分なほど理由や原因はあった。

裁判になっても勝てるぐらいの理由。

幸か不幸か私達には子供だっていなかったのだから。



なのに、私はどうして離婚しなかったんだろう?



「そ、それは…」


世間体?出戻りが嫌?バツイチになるのが嫌?







「俺はサディストだから同じ匂いのする同族はすぐにわかるって言ったでしょ?

実際浩一さんだって俺以上のサディストだったし。


それと一緒で…

マゾヒズムの匂いもわかるんですよ?」






マゾヒズム…?

それが、何なの…?

私と何の関係があるの?





禍々しい何かが渦巻く徹の目。

怖いはずなのに、目を離せないでいる。






「8年も浩一さんと一緒にいて自覚なかったんですね。
自分がそのマゾヒズムだって」







ドクッ



心臓が止まりそうだ。

まるで、剥き出しになった心臓に釘でも打たれたみたい。
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