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濡れて堕ちて……
第3章 火花
あ、どうしよう…

話さな過ぎるのも逆に不自然かな。

っていうか、いつもなら黙って食べる癖にどうして今日に限っていきなり…。


「あの、ちょっと体調不良で」


別に悪い事なんかしてない。

体調不良なのも嘘じゃない。 

何も慌てる事はない。




「あー、今朝腹が痛いとか言ってたな」

「それがまだ続いてるみたいで…」

「ふーん。医者には診てもらったのか?」



「あ、うん。一応…」



何となく、救急車で運ばれた事は言えなかった。

新村さんに関わるような事は言えなかった。

浩一と新村さんに接点なんかあるわけないのに、何故か言っちゃいけない気がした。


言う必要もないだろう。


「医者が診たならいいけど」



私を見ようともせずつまらなそうに呟き、私の作った料理を口に運ぶ。

この人は、新村さんみたいに心配なんかしてくれないんだろうな。

今更心配して欲しいなんて思わないけど。




「あ、そんな事より週末の休みはどうなってんだ?」



え…?


「週末?」

「俺の友達との食事会。まさか忘れてたんじゃねぇだろな?」



いや、覚えてる。

覚えてるけど…。



この人は
妻が病気で辛そうにしててもご友人の事しか頭にないのだろうか?

救急車で運ばれたなんて夢にも思ってないだろうけど


「だから、昨日も言ったけど、仕事の都合もあるから」

「たかだか、ただのパートだろ?」
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