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濡れて堕ちて……
第3章 火花
翌日。
浩一はいつもより早めに出社。
私と顔を合わせたくなかったのだろう。
テーブルに置いてあるお弁当を持つや否や家を出て行ってしまった。
「おはよう」の言葉すらなかった。
昨夜も
私はベット、浩一はリビングのソファで寝ていた。
結婚して8年、風邪でもひかない限り別々に寝る事なんかなかったのに。
「1,420円になります。2,000円お預かりします」
喧嘩しようが私の仕事は変わらない。
「おはようございます。580円になります」
私は自分に与えられた仕事をするだけだ。
「陽子ちゃん、今日は元気ないじゃない?」
いつもの朝の戦争が終わった。
さすが長谷川さん、と言ったところか、私の態度の変化の察知が早い。
「主人と喧嘩したんです」
「あらあら。通りで声のトーンが低いと思ったわ~」
そんなにわかりやすいぐらい不機嫌オーラ出てるのかな、私。
反省しなきゃ、今の私には職場だけが逃げ場なんだから。
「夫婦喧嘩は犬も食わないって言うじゃない。いつまでも落ち込んでないで今日辺り美味しいご飯でも作って仲直りしなさいな」
私の肩をポンっと叩いて元気をわけてくれようとしてる長谷川さん。
私のこの落ち込みは、浩一と喧嘩したからじゃない。
浩一の事で悩んだり落ち込んだりなんて、もう慣れた。
新村さんの事だ。
昨日、いきなりあんなメールを送ってしまって
きっと変に思われたに違いない。
結局、返信はないままだった。
救急車を呼んでくれたお礼がしたかっただけなのに
何だってあんなメールしちゃったんだろう。