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濡れて堕ちて……
第3章 火花
私が新村さんに抱いている感情は

子を思う母親の気持ちみたいなものなのかな?


笑顔が見たい、喜ばせたい、何かしてあげたい。


親子ってほど年齢は離れてはないけど、姉弟っていう感情ではない気がする。



「俺、今日車で来てるんですよ。隣町のスーパーで食材買いましょう!」

「いいわよ。この辺のスーパーじゃ誰が見てるかわかんないもんね」



本当に優しいな、新村さんって。

さり気なく気遣ってくれて、一緒に買い物してくれるなんて。



…きっと、今までの彼女も幸せだったんだろうなぁ。




そんな事を考えた瞬間、また体のどこかがチクリと痛んだ。

また胃?とも思ったけど今回は違う。

何だろう、胸が少し痛い。









喫茶店を出て新村さんの車に乗り込んだ。

真っ白のセダン。

車の事はよくわからないけど、高そうな車だ。

あまりコソコソしたら逆に怪しまれるから、と堂々と助手席に座った。が…

座ったはいいけど



「あ、あの…いいの?助手席…」

「何か問題でも?」


何かって…。

私の中で“助手席”というものは特別な意味を持っている。

ここに座っていいのは、その人に取って特別な人だけだと思ってるから

私なんかが座っていいのかな、と。

最近の若い子は違うのかな…、それとも私の考えすぎ?


「本当は、可愛い彼女とか乗せたかったんじゃないかな~と思って」

「昨日も言いましたけど、俺はマジで独り身です!」


「さっきの喫茶店でだって…、彼女でも何でもない私の分まで払ってくれたし」

「女性に財布を出させるような教育はされてません!」

「最近の若い子なんて、みんな割り勘なのに珍しいわね」


一昔前は男が出して当たり前、な雰囲気だったのに
今じゃ割り勘が普通だって聞く。

それだけ女性が強くなって来たのか男性が弱くなって来たのか。
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