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濡れて堕ちて……
第3章 火花
「鈴村さんの旦那さんは何のお仕事なんですか?」

浩一の仕事は…、確か…

あっ…。


ある事に気づいた。

最近は会話が無いからと言うのもあるけど
浩一は仕事関係の話は滅多にしないから忘れてたけど

「新村さんと一緒で、確か食品関係だったような…」

「え?本当ですか!?」

「えぇ。以前、車の中にや調味料系のサンプルみたいなのが乗ってた気がする…」


浩一は妻が仕事の事に口出しするのを嫌うタイプのようで
浩一から口にしない限り仕事の内容まではわからない。

毎朝スーツを着て出勤する浩一の後ろ姿しか知らない。




「名前は…、浩一さん、でしたっけ?」




「えっ!?」





この場にいるはずのない人物の名前。

出てくるはずのない名前に、声が裏返りそうなほど驚いた。

と、同時に嫌な汗が背中を伝った。


「な、何で新村さんが知ってるの?」

「先日、救急車の中でうなされながら呼んでましたよ~」



私が倒れて新村さんに救急車を呼んで貰ったあの日だ。

た、確かに新村さんに抱きかかえられた瞬間、あの腕の感触を浩一だと錯覚してしまったけど。

よくよく考えたら、あの時間、あんな場所に浩一がいるわけないのに。

急に恥ずかしさが込み上げて来て火照る顔を隠すので必死だ。

「ごごごめんなさい。命の恩人なのに…」

「オーバーですよ!全然気にしてませんから」
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