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濡れて堕ちて……
第1章 孵化
私のちょっとした楽しみなのだ。


商品をレジに通しながら

買った物と買った人物を見比べ

その人の職業や生活を想像する。


「いらっしゃいませー!おはようございます!」

例えば、この人…
毎朝、コーヒー1本と玉子サンドを購入する50代ぐらいの男性。

ビシッとしたスーツから高そうな時計がチラつく。
眼鏡も高そうだし、課長クラスかな?


「ありがとうございましたー!次でお待ちのお客様ー」

次はこの人、見た目は20代前半。
メイクはボロボロで隈が出来てる。
髪は派手目なブロンズに巻き髪。

ウコンを3本購入。

朝帰りのホステスさん?かな。


「ありがとうございます!!次でお待ちの…」

派手なメイクに派手な髪型、ゴテゴテのネイル。
さっきの人みたいにメイクが崩れてるわけじゃないし隈もない、ホステスさんじゃなさそうだ。

ショップ店員さん?とも思ったけどいつも抱えてる大きな鞄の中から制服らしきものがちらちら見えた。

少し派手目なその制服は…、アミューズメント関係の人?かな。



悪趣味だが
レジなんて毎日毎日、同じような作業の繰り返しだ。
もちろん棚卸しや掃除もするけど。

こんな気晴らしがあっても罰は当たるまい。
その人をストーカーしようとしてるわけじゃないのだから。


「はぁ、朝の戦争ももうすぐ終わるね」

「長谷川さん…」

私の真後ろのレジを担当している、50代のパートさん。

確かに長谷川さんの言うとおり、早朝のこの混みようは戦争だ。
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