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濡れて堕ちて……
第3章 火花
それが原因で自分で魚を焼く事はなくなったそうなのだ。

それでも、どうしても焼き魚が食べたかったみたい。

スーパー等で売ってる、既に焼かれて冷凍されてる出来合いものじゃなく、焼きたての焼き魚。

「やっと食べられますよー!」

「いくら冷蔵庫に入れてて、火を通すからって言っても賞味期限の切れた生魚は危ないわよー」

「うーん、火加減が甘かったのかな?」




あぁ、いつ以来だろう。
手料理を楽しみにしてもらえるなんて。

忘れかけてた、こんな幸せな気分。

本当に、ひだまりみたいに私の心を軽くしてくれる人。



材料を買い込み、車に戻り、スーパーから1km近く走ると
茶色の外壁をした大きなマンションが見えた。

どうやら、ここが新村さんの自宅らしい。

パッと見はうちとそんなに変わらない。
築年数もそんなに差はなさそうだ。

駐車場に車を停め、入り口に向かうと、そこはうちと違ってオートロック。

こっちのマンションの方が新しいのかな?


「このマンションって何階まであるの?」

「5階です。でも俺は下の住人に気を使いたくないから1階の角部屋です」

オートロックのダイヤルを回し中に入って行く新村さんの後ろを着いて行く。

廊下も綺麗…。

「私もマンション住まいだけど、何故かオートロックじゃなくてさー」

「この辺は治安が悪いらしいんです。だからこの辺の賃貸の家賃って割安だって噂があるんです。このマンションも安かったですから」



ガチャ


鍵が

開いた。
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