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濡れて堕ちて……
第3章 火花
「うぅん、何でもない…」

こんな時に浩一の事なんて思い出したくないのに。

「陽子さん、砂糖とミルクはどうしますか?」

「あ、ミルクはいらない。お砂糖2つ頂ける?」


浩一とは違って自ら台所に立ち、私の為にコーヒーを入れてくれる。

そんなちょっとしたことなのに

どうしてそれがこんなにも嬉しいんだろう。


「新村さん、今日お仕事は?」

「有給です。俺有給とか全然使わないんで勿体無いって思ってたから、今日誘ってくれてちょうどよかったですよ」


そんな…
そんな嬉しそうに微笑まないでよ…。


「陽子さんの手料理が食べれるなんてラッキー!」



新村さんのオーラは苦手だ。

複雑に絡んでぐちゃぐちゃになってる私の心紐をを一気に解いて

一瞬にして癒やしてくれる。



「っ、ひっく…」

「ちょっ、よ、陽子さんっ!?!?」



カシャンッ、グラスを置き私のそばに駆け寄ってくれた。

気づくと、私の頬を熱い涙が一滴伝い

気づいた時には止められないほど泣き出してしまっていたのだ。


「ど、どうしたんですか?」

オロオロした様子で必死に私を慰めようとしてくれている。

抱き締める、訳にもいかないしね。


「緊張が…解けて…」

「え…?緊張?え、俺にですか?」


小さく首を横に振った。

違う、そうじゃない。

そうじゃなくて…
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