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濡れて堕ちて……
第4章 大罪
気にしないでと、私が言うより先に浩一が会話を遮った。



「あー、マジでこいつは気にしなくていいから。中森も嫁さんもこんな奴に敬語使う必要ないから」




“こんな奴”ですか…。





まぁ、浩一のこんなところには慣れてるから別に気にはしなかった。


友達を前にしても相変わらずだ、そう感じただけだった。

浩一に酷い扱いをされればされるほど

頭に浮かぶのは徹の事。





「中森達、結婚式は?」

「来月。鈴村絶対来いよ!お前の初恋の村上さんも招待したから!」

「マジで!」


妻を目の前にして言う台詞じゃないし浩一の顔色も一瞬にして光った。



「俺の方の招待客は仕事関係の人ばっかだし、1人ぐらい同級生に来て欲しいじゃん」


「えー、それじゃ俺、完全にアウェイじゃん」


今の私もアウェイですけど…?


運ばれて来たカクテルを飲みながらとりあえず会話を傍観することにした。

入れる隙間もないし。





徹は今頃仕事かな?





昔の私なら既に気分は最悪だっただろう。

見下されたような発言をされて、初恋の人の話までされて。

私達は結婚して8年も経ってるんだから嫉妬なんてしないって思われてるのかな?




私を嫉妬から救ってるのは

積み重ねられたら8年という歳月じゃない。



つい最近知り合った1人の男性だ。




「ちょっとトイレ行って来る」







何か、別に私がいなくても平気みたいだし。

こんな事なら仕事行けばよかった。

そしたら徹に会えたかも知れないのに。



トイレの個室に入り鍵を閉めて携帯チェック。

もしかしたら、徹から連絡が来てるかも知れない。

私からはさすがに送れなかった。

仕事してるかも知れないし、特に用事もないのに連絡するのも気が引ける。
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