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濡れて堕ちて……
第5章 禁忌
浩一が出て行ったリビングに戻ると、朝食を終えた食器がそのままテーブルに置かれていた。

あれだけ流し台に置いてって言ったのに。

今日はパートは休みだし、今からどうしようか。

時計を見ると、06:50。

テレビを付ければアイドルのスキャンダルに大物俳優同士の婚約。


どのチャンネルを回しても似たようなニュースばかりだ、つまらない。



ピッ、ピッと無造作にリモコンでチャンネルを回す。


ピッ、ピッ


《次のニュースです。一昨年入籍したあの有名若手俳優に何と不倫疑惑が浮上────────》




ドキッ




不倫

この単語を聞くたびに心臓が跳ね上がりそうになる。



《先日、超人気モデルとホテルの個室で密会をしたんじゃないかと──────》



有名な芸能リポーター達があーだこーだと言い合っているが、私の耳には入って来ない。



《いや~、これが本当なら、ね。奥さんはプライドが高くて有名ですから、離婚になるんじゃないかって関係者全員が言ってますよ。慰謝料も相当な額かと…》




離婚。







不倫、離婚、慰謝料。

よく考えれば、もし浩一に徹との事がバレたら離婚されかねない。

徹だって浩一に慰謝料請求されちゃうんだよね。


離婚だ、慰謝料だって切り離して考えてたわけじゃない。

頭の片隅でブレーキをかけるようにうっすらと覚悟はしてたつもりだ。

けど、実際こーいうニュースを目の当たりすると恐くなる。



慰謝料や離婚じゃなく、今自分がしてることに。




それでも





~♪~♪♪~♪

「もしもし」

『出るの早っ!午後から空き時間が出来たんでお茶でもしませんか?奥様』






それでも








徹を切れないのはなぜ?
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