この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
濡れて堕ちて……
第5章 禁忌
ねぇ、徹は恐くないの?
待ち合わせはいつもの喫茶店。
空き時間が出来たって言ってもいつも1時間ぐらいだ。
この喫茶店でお茶を飲むのが私達の日課。
「いらっしゃいませー」
「陽子さん、こっちこっち」
徹のあのひだまりみたいな暖かいオーラのせい?
私が席に着く前に徹は既にアイスコーヒーを頼んでて半分ぐらい飲んでいた。
「マスター、私にも同じの下さい」
「はい、少々お待ちを…」
さすが平日の午後、お客さんは私達を入れて3組だけだった。
「ごめんね。待たせたんじゃない?」
「全然。今日は取引先との商談がスムーズに行ったんです。まぁ、後からまた別口の商談もあるんですけどね」
忙しそうだな、徹。
これから熱くなるのに…、日射病になんてならなきゃいいけど。
「今日はお休みだったんですね。朝スーパーに行ったら陽子さんがいなくて若干凹みましたよ」
「相変わらず口が上手いわね」
徹はどう思ってるんだろう?
もし、私達の事がバレて
浩一に慰謝料請求されたりしたら。
徹の口から告白はされたことあるけど
もっと確信を突いた台詞を聞いたことがない。
「もっと早く会いたかった」とか
「俺のものになって欲しい」とかって
少なからず思ってくれてたりする?
って、何を図々しい事考えてるのよ、私は。
「はい、お待ちどうさま~」
私のアイスコーヒーが運ばれて来た。
砂糖を入れながらバカなことを考えた。
「ねぇ、徹」
「ん?」
「もし、私達の関係が浩一にバレたらどうする?」
飲もうと口元まで持って行ったグラスをテーブルに戻し
真剣な趣で私を見た。
「え?……バレたんですか?」
「違う違う!もしもの話よ!」
普通なら慰謝料請求されるかもって思ったら早々に手を切るだろう。
いきなり現実を突き付けられたら誰だって恐くなるに決まってる。
「うーん……」
「ちょっと、そこまで本気で考えないで!本当にただの例え話だから!」
徹ってこーいう事になると真剣に考えちゃうのよね。