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濡れて堕ちて……
第5章 禁忌
─1階、ロビー─
「お忙しいところアポも取らずにすいません。私、カルビナス株式会社営業の新村と申します。今日はどうしても鈴村さんにお会いしたくて足を運ばせて頂きました」
「あの、カルビナス株式会社と言えば主にスイーツ系のお菓子を作ってらっしゃる会社ですよね?」
「ご存知でしたか?光栄です。スイーツと調味料、接点がないのは従順承知です。こちらの会社に比べたら取るに足らない小さな会社ですし」
「うちと比べたら小さいかも知れませんが、スイーツ菓子業界じゃ常に上位の成績。知らないはずありません」
「ありがとうございます!」
「でも、カルビナスさんとは何の契約も結んでませんし、僕はあなたに会った事もありません。それなのにどうして海外製品担当の僕を?」
「いえ、今日ここへ来たのは仕事の話じゃないんです」
「え?」
「どうしても鈴村さんのお耳に入れたいお話があるんです───────」
今日は浩一、残業はないって言ってたからいつもの時間に帰って来るのかな?
リビングのテーブルに浩一の好物ばかりを並べ帰りを待った。
もし、浩一が少しでも私の話を聞いてくれたら
私は思い止まるかも知れない。
いつかは、どちらかの手を離さなきゃならない日が来る。
私はどっちの手を取るんだろう。
「ただいま」
「おかえりなさい!」
パタパタと玄関まで走って行くと、浩一は靴を脱いでる途中。
「お、お疲れ様」
「あぁ、珍しいな、出迎えなんて」
そう言いながらリビングに入った浩一。
食卓に並べたのは浩一の好きなものばかり。
「どうしたの?このご馳走」
「あ…、たまにはいいかなって」
不倫をした罪滅ぼしって訳じゃないけど、改めて自分がどれだけ恐ろしい事をしてるかわかった。
見えてないところで永遠の愛を誓ったパートナーを裏切っていたのだから。
「とりあえず、お風呂入って来たら?汗かいたでしょ?」
喜んでもらえたみたい。