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濡れて堕ちて……
第5章 禁忌
何もかもが久しぶりで懐かしかった。

こんなふうに浩一に優しくされたのなんて、恋人になりたての時以来だ。

典型的な、釣った魚には見事に餌をあげないタイプ。

いや、餌をあげずに餓死させてしまい兼ねない人だ。

でも、餓死寸前で気づいてくれた。


私も、久しぶりに与えられた餌を貪った。



騙されてるのかな?

明日になればいつもの浩一に戻ってる?

今日の事なんて忘れて

またワガママばっかり言うようになるのかも知れない。


でも

浩一

あなたはやっぱり私の愛する人。
今日、心の底から思った。
体全部でそう感じた。



浩一が帰って来る前にせめて何か身につけなきゃと思い先ほど脱ぎ捨てたシャツを羽織り下着を身につけ再びベッドに戻る。

汗が乾いて風邪ひいたら最悪だもん。


暫く待ってると浩一がコーラ缶と湯気が出てるマグカップを持って戻って来た。

「想像を頼りに、見様見真似で作ったから味の保証はないけど」

ベッドに腰を下ろし私にマグカップを手渡す。

若干、お湯が多いような気もするけど
湯気が顔にかかると、ふわっといい香りが鼻をつく。

「頂きます」

不思議。

浩一が私の為にコーヒーを入れてくれるなんて初めてだもん。

ふぅっ、と少し覚ましながら少しずつコーヒーを口に含んでテイスティングすると

「美味しい!」

それでも、味はしっかりあるし、程良い甘苦さもある。

こんなに並々注いでるのに味がしっかりしてるって事は…、どんだけコーヒー粉末入れてんのよ。


私の満足そうな顔見て一息ついた浩一。

プシュッとプルタブを開ける音と炭酸の弾ける音が聞こえ、ゴクゴクッと美味しそうな喉越し音も聞こえた。

炭酸って喉がピリピリするから浩一がコーヒーを苦手とするのと同じように私も炭酸が苦手だ。
 
なのに、よくあんな風に水みたいにゴクゴク飲めるものだ。
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