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濡れて堕ちて……
第5章 禁忌
「よくそんなものゴクゴク飲めるわね。喉痛くならない?」

「それがいいんじゃん。陽子は子供だなぁ」

「コーヒーも飲めない人に子供扱いされたくありません!」



お互い、目が合うたびに恥ずかしいような照れ笑いが零れる。


これからもっと、たくさん喧嘩しよう。

もっとわかり合う為に、自分をぶつけよう。

私も、もう浩一から逃げない。

こんな気持ちを取り戻せてよかっ─────。



「あ、そー言えば今日はシトラスの匂いがしないけど、使うのやめたの?」





シトラス。

その一言で幸せな気持ちがグラついた。

「結構いい香りだっただろ?」



違う、浩一。

シトラスの香りは、私の香りじゃない。



「あ、うん。飽きちゃったから…」

「そうなんだ」


今日は徹と肌を重ねてない。

香りが移るような事もしてないし、そんな接近もしてない。

徹に抱かれた後は浩一にバレないようにシャワーで残り香を消してた。

浴室にだけシトラスの香りが残ってる。



「俺、シャワー浴びてくるけどお前どうする?」

「あ…私は後で入るからお先にどうぞ…」
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