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揺れる心
第1章 雨の日の出会い
「…真理子さん?
大丈夫ですか?」

少しぼんやりしてしまっていたようで、
名前を呼ばれていたことに気づかないでいたようだった。


「あの…変なヤツだと思ってます?
引いちゃいました?」


首を横に振って笑った。

「こんなにストレートに告白されたのなんて、
学生時代以来かなって思ったら可笑しくなっちゃって」

「えっ?
そうなんですか?
みんな、どこを見てるんだ。
いや、その方が俺にとっては有利だな。
嫌ではないです?」

「あの…季節外れのエイプリルフールとか、
揶揄ってる訳ではないの?」

「違います。
本当に一目惚れして…。
病院で施術してる時に、
綺麗な人だなって思って見てたら、
目が合っちゃったから、
動揺してたんです」

「光栄です。
ありがとうございます」

「じゃあ…?」

「でも、ごめんなさい。
お互いのこと、何も知らないし、
年齢差は、私が気になってるし、
離婚しちゃった時に結構嫌な思いもして、
もう誰かと付き合うとかはもう良いかなって思ってるから…」

「だったら、取り敢えず、
お互いのこと、知り合えるように、
付き合ってください。
真理子さんの嫌なことはしない。
いや、判んないな。
なるべくしないように努力するから、ダメ?
歳下で、不甲斐なく見える?
歳なんて、年月経てば気にならなくなるよ。
どうせ、寿命は女性の方が長いから、
ちょうど良いよ?」

「論破されちゃいそうね?」

「じゃあ、付き合ってくれる?」

あまりにも真剣に言葉を重ねるので、
私は首を縦に振ってしまった。


「真理子さん、ありがとう。
じゃあさ、明日、デートしよう」

「えっ?明日?」

「予定、あるの?」

「ないけど…」

「水着買って、プール行こうよ?
海はまだ、水が冷たいから無理だし。
ジャージも!
そしたら、ストレッチも出来るし」


本当に、素直な仔犬のような明るい笑顔で言うので、
押し切られてしまって、頷いて笑ってしまった。


「真理子さん、笑うと本当に可愛いな」と言われて、
頬も耳も紅くなって熱くなってしまう。


「でも…」
と、少し恐い顔をして続ける。

「簡単にオトコを部屋に入れたりしないでね?
危ないよ?」

「えっ?」

「無防備過ぎるよ」と言うと、
ソファに引っ張られるように座らされてしまった。
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