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揺れる心
第1章 雨の日の出会い
気づいたら上にのし掛かるようにされて、
組み敷かれていた。

逃れることは出来ない。


「えっ?
なに?どうして?」

「ほら、こうやったら簡単に自由は奪えて、
キスだって、それ以上のことだってされちゃうんだよ?
危険でしょ?
だから、絶対に部屋にオトコ、入れないでね?」

「でも…」

「でも?」

「海斗さんは、先生でしょ?」

「うわ。
もう一回、呼んで?
キュンときた。
じゃなくて、
医者だって、オトコだよ?」

「でも、嫌なことはしないって…」

「しないようにはするけど、
我慢出来ないこともあるからね?」

「私なんか…」

「えっ?」

「私なんか、オバサンだし、
可愛くもないし、
可愛げもないから…」と言うと、
涙が溢れてしまう。


少し困惑した顔で、
海斗さんは手の力を緩めて、
座り直させてくれる。


「ごめん。
怖い思い、させちゃった?
あまりにも真理子さんが無防備で、心配になっちゃってさ」と言うので、
私は首を横に振りながら誰にも口に出来なかったことを初めて言葉にした。


「こんなつまらなくて可愛げのないオンナなんて、
抱けないって言われたの。
だから、子供も出来なくて、
そのことでお姑さんからは毎日のように詰られて…。
公然と浮気もされて。
私の両親がそれに気づいて、怒りまくって離婚させたの。
その時、
こんな欠陥品、こっちから願い下げだって言われたの」


言葉にすると、少し客観的に考えられるような気持ちもしたけど、
それ以上に欠陥品と言われた時のことが蘇ってきて、
震えてしまう。


「酷いことを言われたんだね?
真理子さんが欠陥品の訳、ないよ?
だってこんなに可愛いんだから」と言って、
そっと抱き締めて髪を撫でてくれる。

張りがあって若さを感じる身体つきに、
少し驚いてしまって、
恥ずかしさから違う意味で震えてしまう。


「やばいな。
真理子さん、良い匂いするし、
柔らかいし、
小さくて可愛いから、
キスしたくなっちゃうな。
でも、会ったその日にキスなんて、
嫌だよね?」と言って、
額にキスをする。


「これ以上、一緒に居ると、
まじ、止まらなくなるから、
今日は帰ります」と、海斗さんは突然立ち上がって言った。
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