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揺れる心
第3章 横恋慕〜愛情か嫉妬か
部屋に入っても、海斗さんは黙ったままだったので、
私は部屋着に着替えてからキッチンに立った。

特にリクエストはなかったから、
簡単なパスタにしようかなと思って、
ミートソースを作りながらサラダも用意した。
パスタを茹でていると、
「ごめん。
ちゃんと説明しないで」とキッチンに顔を出すので、
「このランチョンマット敷いてから、こっちのお皿、運んでくれる?」と言うと、
「わ。ミートソースだ!」と急に子供みたいな顔をする。

「次はこっちのサラダのお皿ね?」と言って、
私はコンソメスープの入ったマグカップを運んだ。

そして、席に座ると、
「話したくないことは無理して話さなくて良いのよ?
まして、ご飯の前にはね?
いただきましょう?」と笑うと、
海斗さんも笑って、いただきますと手を合わせた。

そして、私の倍くらいの量をあっという間に平らげてしまった。


「俺、コーヒー淹れてくるね?
真理子さんはゆっくり食べてて?」とお皿を下げながらキッチンに行くと、コーヒーを2つ淹れて持って来てくれた。


「これでも仕事のせいで、
だいぶ早く食べるようになったんだけどな」と言うと、
「俺は真理子さんのおかげで、
少し食べるのが遅くなったよ?」と笑った。


食事が終わるとすぐに歯磨きしたい方なので、
そう言うと、
「じゃあ、俺も歯磨きする!」と言って洗面台2人並んで歯磨きをした。


そして、焙じ茶をのんびり飲みながらソファに座って雨の音を聴いていた。


「これ…」
と言って、お財布の中から古い写真を見せてくれた。

「…お母様と海斗さん?」と訊くと、
静かに頷いて、
「良く見て?
真理子さんに似てない?」と言う。


確かにお化粧も殆どしてない顔立ちは、
私に良く似ていた。


「私なんかよりずっと綺麗…」

「これ見せたら、
マザコンって思われるかなって思ったし、
母さんに似てるから好きになった訳じゃないから…」
と言って黙り込んだ。


「いつか、お会いしてみたいわ?」と言うと、

「もう、会えないんだよね。
亡くなったんだ」

「ごめんなさい」

「俺が幼稚園の時に。
写真もあんまり残ってないし」

「…」

涙ぐんで唇を噛み締めている海斗さんのことを、
私はそっと抱き締めた。

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