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揺れる心
第7章 安藤家の崩壊と再生
お兄様は涙を流し続けていた。



陸也さんとお父様とお祖父様を残して、
私達は安藤家を後にした。


多分、両親も言いたいことはあっただろうけど、
母は明るく、
「なんだかドラマみたいな話を聞いちゃったわね?
あの…真理ちゃんは大丈夫なの?
海斗さんは…気にしてないの?」とだけ言った。


私と海斗さんは手を握り合って見つめ合うと、
同時に力強く頷いた。

両親を自宅に送ってから、
一足早く大先生の家に戻った。


私は使わせて貰っている百合さんの部屋に、
海斗さんを連れて行って、
洋書に挟んであった便箋をそっと見せた。


「兄貴は…母さんのこと、
ずっと好きだったんだな。
亡くなった頃は、
高校2年か3年だったと思う。
まさか、兄貴とお母さんが?
いや、あり得るのか。
小さかったから知らなかった。
父さんがここに来なくなって、
淋しそうな母さんを見て?
もしかしたら、会った時から憧れてたのかも。
だって、兄貴の母親、般若だったからな。
父さんも般若さんが恐くて、
母さんと一緒に居てホッとしてたんだろう」

便箋を見ながら静かに言う。


「でも、赤ちゃんが出来たのは…
母さんとしては許されないことだった。
父さんへの裏切りになるからなのか、
義理の息子との間に出来てしまったことだからか、
その両方なのか。
気持ちは判るけど…。
生きてて欲しかったな」と、涙を流す。


「なんか、兄貴が俺ばっかり愛されてるって思ってたの、
今になって理解出来た。
俺、愛されてたんだね?
兄貴、可哀想に思えてきた」と、鼻を啜る。


「これから、兄弟をちゃんとやっていけば良いじゃない?」


「真理子さんは良いの?
酷いことをされて…」


「うん。
意識なかったけど、
お兄様が言ってた通り、
しようとしたけど、出来なかったんだと思ってる。
それで、百合さんの名前を呼びながら泣いてたの。
それに、もしも最後までされてても…海斗さんが上書きしてくれたから大丈夫。
海斗さんも、大丈夫でしょ?」と言って、
そっとキスをした。
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