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揺れる心
第7章 安藤家の崩壊と再生
「ただ眠っていると思ったけど、
物凄く身体が冷たくて…
慌てて父さんに電話をした。
飛んできてくれて…すぐに爺ちゃんの病院に運んだけど、
もう戻って来てくれなかった」


「陸也から話を聞いて調べたら、
百合子さんは妊娠してたよ。
陸也の子供だったんだろう。
でも、そのことを公にするのは、
とても出来ないと考えて、
薬の量を飲み間違えてしまって、
心筋梗塞を起こして亡くなったという死亡診断書を書いた」と、
大先生は静かに言った。


「自分のせいで百合さんが死んだことを認めたくなくて、
百合さんを捨てたお父さんのせいにしようとした。
或いは、海斗のせいだって。
だから、海斗が幸せになるのが許せなくて、
もっと酷いことをした。
本当に真理子さん、申し訳なかった」
と、涙を流して頭を下げた。


「海斗にはね、
単に事故死と言っていた。
この前の話で察してしまったかもしれないけど。
自分と陸也の罪は、
自分達だけが背負えば良いと思ってる。
でも、真理子さんにはきちんと話しておこうと思った。
全ては、私が曖昧で、
心が揺れて何一つ決断出来ないまま、
保身に走ってしまって、
一番大切な人を失うことになった。
だから、もうこれ以上、
失いたくない」
と、お父様は言う。


「僕も…百合さんに対する想いをすり替えて、
海斗が想う人やモノを奪うことで自分を保とうとしてきた。
本当に自分が欲しいかじゃなくて、
海斗が欲しいモノを欲しがるだけ。
真理子さんは…
そんな中では本当に好きだったのかもしれない。
違う出会い方してたら…と思うよ。
でも…
真理子さんは、海斗の奥さん。
僕の義妹だから、家族。
心からそう思えたよ。
ありがとう」と、陸也さんも頭を下げる。


「それでね、
海斗に伝えて欲しいんだ。
僕は日本を離れることにした。
滅多に会えなくなるけど、
次に会う時は、
家族として会えたら嬉しい思ってるって言って欲しい」


「えっ?
いつから?」


「明後日には。
だから、当分会えないけど、
遠くから2人の幸せを祈ってるよ。
最後に…握手させてくれる?」


頷くと、立ち上がってゆったりと握手をすると、
「海斗と幸せに。
真理子さん、本当にありがとう」と言った。
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