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揺れる心
第7章 安藤家の崩壊と再生
「百合さんのことは好きだったよ。
今でも。
でも、真理子さん、好きです。
本当に。
最初は、海斗への嫉妬からだったかもしれないけど、
小さくて可愛くて綺麗で。
優しくて思い遣り深くて、
いつも周りを見ながら微笑んでて、
でも時々おっちょこちょいでなんかやらかすような…」と、
楽しそうに笑う。

「百合さんと真理子さんの間で、
心が揺れてたと思う。
今は、はっきり判ったよ?
百合さんは過去の人で、
真理子さんしか居ないって。
でも、真理子さんは海斗のものだから、
僕の出る幕はないし、
あんな酷いことをした僕に、
真理子さんに近づく資格もないから…。
だから、物理的に遠く離れようと思った。
遠くから想うのは、構わないよね?」


陸也さんの話を聴きながら、
私は涙を流していた。


「真理子さん、どうしたの?
なんで泣くの?」


そっと指先で涙を拭ってくれる。


「私、本当に怒ってない。
百合さんへの愛情が深過ぎただけだって…」


「真理子さん、泣かないで?
最後の顔が泣き顔だと困っちゃうから。
別に、もう会えない訳じゃないし。
日本に戻ってきたら、また会えるよ。
家族だから」


「それ、言おうと思って。
ちゃんとお見送りしようと思って来たのに。
ごめんなさい」と、無理矢理笑った。


「そろそろ、保安検査しないといけない時間かな?
大丈夫?」と言うと、
陸也さんは立ち上がる。

お会計をして、
2人、無言で歩く。

エアポケットのように、誰も居ない処で、
陸也さんが立ち止まった。


「本当に、海斗の前に、
普通に会いたかった。
そしたら、あんなこと、しなかったのに。
時間を戻せるならって思うよ。
真理子さん、本当にごめん」


私は黙って陸也さんを抱き締める。


陸也さんも私を強く抱き締めて、
「最後にキスしても良いかな?
親愛のキスで良いから。
無理矢理するんじゃなくて、
寝てる時に勝手にするのでもなくて…」

私はその言葉を遮って、
背伸びをして腕を首に絡めてキスをそっとした。

唇を離して私の瞳を覗き込むと、
額や頬にキスをして、
もう一度見つめ合った。

瞳を閉じると、
改めて唇にキスをする。

とても優しくて紳士的なキスをすると、
「ありがとう。
これで心置きなく出発出来るよ。
真理子さん、僕は…
ずっと貴女を愛してる」
と言った。
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