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私立煩悶女学園の憂鬱。
第1章 水球部 編 (1)
「よく分かったね。練習スケジュールを調整してきたんだ」
それだけじゃないでしょ・・・
白石コーチの気持ちよさそうな甘い声を思い出す。
「そう、お疲れ様。私も打ち合わせなの・・・白石コーチと」
そう言ってじっと見つめると、ほんの一瞬だけ彼の目が泳いだ。
しかしすぐに元に戻る。
「キャプテンの立場は大変だよね、お互いに」
「うん、本当ね。いろいろあるから・・・ありがとう」
黒川君がエレベーターの扉を手で押さえてくれている間に、私は中に入っ
た。まだ言いたいことが言えていない。
笑顔のまま、気持ちだけ焦っている。扉が閉まり始めた。
待って、待って、行かないで・・・
自分から言おうと思ったのに、言えなかった。またね、と片手をあげる彼
に合わせて、私も手を上げてしまう。
だめっ言えないよ・・・
そう思った次の瞬間、いきなり彼は手で扉の動きを止めてしまった。びっ
くりしたように扉が慌てて開いていく。
「俺達の打ち合わせは、いつにしようか?」
私が言いたかったことを彼から言ってくれた。ホッとした。2人きりで会
う時間が欲しかったから。
「明日の夜の全体練習が終わった後はどう?そのままプールサイドで」
変に思われないかな・・・
真面目な顔をしていても、私の心臓はドキドキしている。でも、彼はあっ
さりとOKしてくれた。
「いいよ。20時位からだね、でも場所はそこでいいの?」
「うん、個人練習にも付き合ってもらいたいから。いいでしょ?」
私の提案に、ふ~んと言いながら彼は頷いた。
「気合入ってるね。楽しみだ」
そう言ってまた手をあげる。私も真似をすると、やがて扉が閉まっていっ
た。1人きりになると長い溜息をついてしまった。緊張していた身体から
力が抜けていく。
独り占めなんて出来なくても、他の子達には負けたくない・・・それに夢
を叶えるためにも、彼に協力してもらえたら嬉しいな・・・


約束の時刻20時に黒川君は来てくれた。離れた距離から両手を振って笑
っている。子供みたい、そう思って私も笑ってしまった。上はジャージを
着ていて、下は水着。そんな姿で現れた彼が近づくにつれて、下半身から
視線を逸らすのが大変になってくる。水着の時だけより、なぜかHに感じ
てしまう。
目の前に立った彼が言った。
「気になる?」
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