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私立煩悶女学園の憂鬱。
第1章 水球部 編 (1)
練習中ならば、こんなことがあっても誤魔化しは効くけれど、いまは
どうしようもない。ただこのまま成長したら、先端が水着の上からは
み出してしまう。それだけは避けたかった。

「黒川君、その意見もボードに書いておいてね」
突然、愛がそう話しかけてきた。
「それは私も賛成だから、今後どうやって練習に入れていくか話し合
いましょ」
「そ、そうだね 」
俺は、助かった、そう思いながら女子部員たちに背を向けて、ボード
にペンを走らせた。素早く目で、愛に合図を送る。
サンキュー・・・
何やってるのよ!・・・
愛は、そう言いたげな目で俺を見つめ返してきた。
借りを作ってしまったなぁ・・・
そう思いながら反省し、記入していくうちに少しずつ落ち着きを取り
戻していく俺の心と身体。次に女子部員の方へ振り返った時には、ほ
ぼ通常の大きさにまで戻っていた。
女子部員達からは、え~、と、お~、が混ざった声が漏れ、微妙な空
気が広がっていく。一番後ろで見ている男子部員達は、全員が親指を
立ててニヤついていた。
他人事だと思って!・・・
少しイラつきながらも、普段考えている練習方法の説明はすることが
できた。

「はい、2人共ありがと。最後に伝えたいことがあります」
白石コーチの声で全員が振り返った。ホワイトボードの反対側にいた
コーチが立ち上がっていた。俺と愛は一番後ろで、並んで腰を下ろし
た。
「合宿の選抜メンバーを2週間後に発表します。方法は全員参加の試
合形式で、今とこれからの可能性を考えて選抜メンバーを決めます。
チームは私が決めてありますから、後で送るので見ておいてね。
それと、その前に・・・」
コーチが全員を見渡してから言った。
「皆頑張ってくれているからご褒美として、今週の週末の2日間は練
習無しのお休みにします!」
想像もしていなかったコーチの言葉に一瞬の沈黙の後、ミーティング
の場に歓声が沸き起こった。
女子部員の人数が何倍にも増えたのかと思ってしまう程の盛り上がり
だ。特に2、3年生は座ったまま喜んでいる部員はいない。立ち上が
ってピョンピョン飛び跳ねながら声をあげている。隣にいた愛も、気
が付けば3年生の女子と抱き合って喜んでいた。
「特別に男子部員と遊びに行くことも許可します!」
突然、大きな声で白石コーチが告げると、今度は逆にその場が静まり
返った。
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