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爛れる月面
第3章 広がる沙漠
「えー、着ましょうよぉ。きっと徹さんも、長谷さんのドレス姿、見たいと思いますよ」
「だろうね」
 まだ確認途中の伝票を置いて、紗友美からさっと手を抜いた。「そりゃ、見たがるでしょ。私にベタ惚れだもん」
「うわムカつく。フツーにノロケやがった。おもんな」
「光本さん、私を何だと思ってんの。ほら戻ってっ」

 しっしっと追っ払うと、「ちぇ」と口を尖らせて自席に戻る紗友美の様子が可笑しく、かりそめ起こった痛みも和げてくれた。

「……ま、徹はともかく、向こうの両親とウチの親のためには、式したほうがいいのかな、とは思うんだけどね。特にウチは母一人子一人だし、母親も、結婚式できなかったらしいし」
「そうですよ。なんでしないんですか?」
「招待状出したり、引き出物とかお祝い返ししたり、結構大変じゃん? 呼ぶ人もさー、お互いの人数のバランス考えたりとかあるし。さらにだよ? 行ったことある結婚式のご飯って、めっちゃかしこまってるわりに、そこまで美味しくない。そんな事にお金使うのもったいない、って思っちゃうんだよね。それなら新居の家具とかの方にお金使いたい。……ごめんね、私、ケチなんだ」

 言ってから、ほんとケチで面倒くさがりだな、と自分でも笑えてくる。

「式だけ、家族だけででもすればいいじゃないですか」
「するって言っても、その辺でできるわけでもないでしょー……」

 少し、会話が途切れた。そのあいだに確認が終わり、よし、と登録ボタンを押すと、

「アホなんですか? 長谷さんは」
「……」

 ん?

「ったく、昭和かよ……、この女」
「……え、何?」

 暴言の咀嚼がついていかない紅美子へ、

「今はですね、一口に結婚式って言っても、かなりのバリエーションがあるんです。家族や親しい友達だけでも、もちろん二人だけでもできますし、フルセットでできるとこもあれば、式場だけ借りる、衣装だけ借りるっていう商売をやっているとこも、そりゃぁもう、星の数ほどあるんです。少子化進んでカップルの数じたいも減ってますし、さらには結婚しない人も増えてきてますしで、ウエディング業界も生き残りをかけて必死なんです。だから今は客側が断然有利、お金かけなくても、手間をかけなくても、いい結婚式はできるはずですっ!」

 紗友美が熱弁を奮ってくる。
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