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爛れる月面
第3章 広がる沙漠
 紅美子は再び徹の胸に身を伏せた。髪が粘液についてしまっても気にせず、味のする乳首へ口づけを施す。

「今の私も、オカズにする?」
「う……」
「する?」
「どうして、そんなこと……、訊くの」
「してほしいから」胸に吸い付いたまま徹を見上げ、「ぜんぶ、私が徹を悦ばせたいから。離れてても」
「んんっ……、クミちゃんっ」
「うれしい?」
「うん……、で、でも……」
「また大きくなってきてる。もっかいしゃぶってあげようか?」
「ううっ……、もう、ク、クミちゃんっ……、もうそんなこと、言わないで」

 徹は頭の上で結んでいた手を切り、前髪に指を立て、瞼を掌底で抑えた。

 その姿に紅美子は動きを止め、

「……私だって、するもん」
「え……」
「徹がまた栃木に帰っちゃって、しばらく会えなくなったら……、私も、自分ですると思う。今日の徹を思い出して」
「……」
「なに? 私がしたら、ダメなの?」
「いや……、そんな、こと……、ない」
「だよね。……そだ。じゃ、オモチャ買おうっと」

 やおら起き上がってベッドを降りると、財布を持ってテレビ台の元にしゃがんだ。小さな冷蔵庫の隣に、いくつかの小部屋に仕切られた自動販売機がある。中では様々な玩具が、扉が開けられるのを待っていた。

「ねー、たくさんあるよー。徹も見ないのー?」

 呼びかけたが、徹は紅美子が離れたときのまま、横たわっていた。

「ねー、結構高ーい。どれにしよー?」

 返事はない。

 紅美子は千円札を数枚吸い込ませると、商品を取り出し、乱暴に扉を閉めた。透明のプラスチックの箱から取り出し、コードに繋がれたローターとコントローラーをぶら下げ、鳴り合わせながらベッドへと戻る。

「徹」
 彼の脇の下に膝をつき、跨いだ。「徹ってさ、結婚したら私をどうするつもりなの?」
「え……?」
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