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爛れる月面
第4章 月は自ら光らない
 斜め先を見て、考えを巡らせながら話している。

「ほーら、やっぱ女のほうが、中身をきちんと見るんだよ。なんなの、男って」
「……なんなんだろうな」

 やっと、井上が知らないこと、答えられないことを訊いてやったことが妙に誇らしく、

「あんた、よく私に色々難しいこと、エッラソーに教えるけどさ。これはわかんないんだ? 私の訊くことは何でも答えますよーぶってるくせに」

 得意げな顔で、ここぞとばかりに煽ると、井上は顔を正面に戻して紅美子を見た。

「……え、怒ったの?」

 悪虐な眼光が、宿っているわけではなかった。何かを伝えようというよりも、すぐ前の女に何かを見出した、そんな目をしている。

「いや……、君の言う通りだ。君の知らないことは何でも知っていると思うのは、とんだ思い上がりだ」
 そして、自身を覆い始めていたものを振り払うかのように、「もう食べないのか? 僕はもう、腹いっぱいだ。明日の朝に食う」

 折詰に板敷で蓋をする。

「あ、じゃあ私の分も食べていいよ。私ももう入らない」

 紅美子は井上の折詰を開け直し、空いている場所に自分が残したものを移していく。

 寿司を箸で挟みながら、何だか、してはならないことをしてしまった気持ちになった。こんな思いは、半年間で覚えがない。不在だった一か月、栃木に行ったし、紗友美と式の準備もした。こんなことなら、徹や結婚の話をして、井上の嫉妬を焚きつけたほうが、よっぽどよかったように思えた。

「……あっ! 今、気づいた」
 だから紅美子は、ことさらな感嘆詞を冒頭に付け、「あんた、洗濯ってどうしてんの?」
「ん? もちろん、干してる時間も乾燥機を回している時間もないからな。ほとんどがクリーニングだ」
「……シーツは?」
「何を気づいたのかわかった」井上の髭が楽しげに曲がり、「もちろん、クリーニングだ」
「ちょ……」
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