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爛れる月面
第4章 月は自ら光らない
 それから数時間が過ぎ、終電を気にしなければならない時間になった。コートを着込み、エアコンを切る。灯りも全て落とし、ブレーカーも下ろしておくか迷ったところで、インターホンが電子音を奏でた。モニタに「Visitance」と表示されている。廊下へ出てドアノブを見張っていると、やがてひとりでに捻られた。ドアが開くと同時に、三和土だけを照らすライトを点けてやる。

「……なんだ、真っ暗じゃないか」
「他に言うことあるんじゃない?」
「ああ、急に連絡が入って──」

 紅美子は壁に凭れて腕組みしていたが、ジュラルミンのキャリーケースを中に引き入れながら理由を述べようとする井上を遮るようにまっすぐに立ち、コートの裾を両手で抑えてお辞儀をした。

「あけましておめでとうございます」
「……。そうだったな。あけましておめでとう」

 今年もよろしく、とは、井上は言わなかった。紅美子も、言うつもりはなかった。

「……あんまり遅いから、キッチンもお風呂も掃除しといた。綺麗に見えてても、けっこう汚れるんだからね。洗剤どころかスポンジも無いとは恐れ入ったよ」

 紅美子は廊下を引き返し、一度は落とした光を甦らせると、コンビニで買った掛け紐のついたスポンジが、掛けるところがないのでシンクの隅に置いているのを指差した。

「鍋もフライパンも無いんだろうな、と思ってたけど、見事に無かったね。だから、あんなもんしかない。ゴミの日に捨てられなくても、洗っておけば大丈夫でしょ。ただし、全部食べること」
 その奥のIHの上に、同じくコンビニで売られていたアルミ鍋のチゲが置かれているのも教えてやり、「ビールが冷えるだけの時間は、充分、ありましたから? アレで一杯やってください」
「そうか……。全部でいくらだ?」
「……。家政婦じゃないっつったろ。あ、あとそれからね」
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