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爛れる月面
第1章 違う空を見ている
 不本意丸出しの顔と声で応えると、

「よし、交渉成立だ。美人が運んできたからなおさらだったんだろうけど、さっきのコーヒーは旨かった。ここを出たところにあった喫茶店のものだろう? 我々はそこで待ってる」


   *   *   *


 約束通り、紗友美は定時よりも前に伝票入力を終わらせた。更衣室では、こんな服じゃなくもっと女子力高い服で来たらよかった、とボヤいたが、ガーリーな装いは、悔しいほどに紗友美に似合っていた。紅美子のほうは、ホワイトの細身のパンツに、肩口がシースルーになっている紫のカットソー。似合っていないわけではない自負はあったが、紗友美以上に、今日着てきた服を後悔していた。

(こんなにスケスケのカッコで飲みに行ったら、徹に泣かれちゃうな)

 せめて、と、冷房対策に置いていたストールを羽織ることにする。スーツ姿の男二人に比べればラフな格好だったが、突然、かつ強引に連れてかれるのだから、文句を言われる筋合いはない。

「予約を入れておいた」

 喫茶店に行くと、すでに二人は外で待っていた。タクシー拾ってきます、と駆け出す早田をすれ違いざま睨んでやると、おどけた様子で頭を掻かれる。ほどなくして大型タクシーが導かれてきて、井上が自らすすんで助手席へ乗り込み、紅美子は最後列に、前の列に早田と紗友美が並んだ。

「普通、上司を後ろに乗せて、あんたが助手席に乗らなきゃいけないんじゃないの?」

 早田の後頭部に言うと、助手席から井上が振り返り、

「何? 君は僕の隣が良かったの?」

 そう言われて口を噤む。

 もう、あとは早田と紗友美がよろしくやるんだろうから、自分はあまり喋らないようにしようと、前のシートに隠し、徹へメッセージを送った。

『会社の子と飲みに行ってくる』
『うんわかった』

 また、即返信だった。
 そして、

『俺は今日は残業。まだ一回目の発表なのに、事前査読でだいぶん叩かれた』

 泣き顔のスタンプ。徹に残り二人のことを言うべきだろうか、と迷っていたが、メッセージを読み、言わないことに決めた。きっと成果発表とやらは、配属に少なからず影響するのだろう。男の存在を教えてしまうと、研究どころではなくなってしまう。

 だから、『がんばれ』と送信した。そして、嘘をつく後ろめたさが、『愛する私のためにね』と付け加えさせた。

 返信がない。
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