この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
爛れる月面
第5章 つきやあらぬ
 ふざけた言い草に身を乗り出しそうになったが、すかさず井上が片手を紅美子の前に出し、未遂に終わらせた。

「ぜひそうしてくれ」
「それにしても」
 呆れた溜息がスピーカーを鳴らした。「あなたも、よ。……あなたも、つまんない男になっちゃったわね。あんな小娘なんかに、なに真剣になってんの」
「話はそれだけだ。……元亭主を助けようとしてくれてありがとう」

 井上は電話を切った。紅美子が話しかけようとすると、車線の増えた東北道へ向けてアクセルを踏まれ、背中をシートに押し付けられて会話を拒絶をされた。

 夜の東北道を北へ向けて走る車はまばらで、ほとんどが大型車両だった。紅美子は前を向き直り、もう一方の脚もシートに上げて、膝の間に額を置いて目を閉じた。脛を抱えている左の指の根にある硬い物を、右指のネイルで叩く。いま、井上が何と引き換えに、何を得たのか、何を失って、何をもたらすつもりなのか、電話を聞いてわかっていた。

 だが、何故そうなるのかが、わからない。

「……なんで、あんなの観せたの?」

 紅美子が俯いたまま問うと、

「君の予想は?」

 問い返す声は、可奈子と話していたときは荒さいでいたのが、穏やかなものになっていた。

「んと……、私が徹を見限ったら、あんたのものにできるから」
「模範回答だな」
「でしょ。私のことが欲しいって、何回も言われてたもん」
「だが、間違いだ」
「えー、欲しかったんでしょとか言わせて、恥かかせないで」
「次は?」

 引き続き、左の薬指の根を右の人差し指で叩きつつ、

「じゃ、愛人のほうから、もうやめる、って言われてムカついて、ゲロまみれにしてやろうと思った」
「なかなか男の心理を捉えた、いい回答かもしれない」
「おっ、当たり?」
「残念ながら、ブーだ」
「言いかたウザい」
/254ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ