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爛れる月面
第5章 つきやあらぬ

「……私のエロさにムラムラしてきたらさ、どっかに駐めて、カーセックス、キメてきてもいいよ」
「せっかくスピード落としたのに、そんなことで捕まりたくはないな」
「ビビってんの? こんなイイ女がすぐ隣でサカってんだから、カバッと来いよ」
「べつにサカってなんかないだろ?」
「んーん、そんなことない。めっちゃ濡れてるよ」
鼻にかかった声を漏らし、より強く両手を動かす。ふくらみを円を描いて揉み、中心で勃ちあがっているはずの突起を探す。利き手の手首をももで挟み込んで、下着の上から狭間をなぞった。
アウディは冷静に、一定のスピードを保っている。自分たちを乗せ、ひたすら北へと向かっている。
「……ね」
紅美子は両手を止めた。
ふくらみはまったく凪ぎ、薄布はからからに乾いていた。
「気が済んだか?」
「……私さ、これから何しに行くんだっけ?」
そう呟くと、井上は勢いよくふきだした。
「おいおい、誰が言い出したのかも忘れたのか? 本当にむちゃくちゃだな君は。徹くんはよくこんなのと二十年も付き合ってる」
「そだね。……私、むちゃくちゃだ」
次に息を吸ったとき、胸下がひどく震えた。噴き出すものを抑えつけるように、紅美子は急いで顔を覆った。笑え、笑うんだと自分に言い聞かせても、手のひらが熱く濡れていく。
「……やだなぁ……、徹……、いなくなっちゃうのか……」
息を吐き出さなければ話せないが、うまく吐き出せず、胸が引き攣り、声が裏返った。言葉にしたい誘惑に負けてみると、とてつもない虚無が襲いかかってきた。
己の無力を嘆く幼な児のように、紅美子は声を上げて泣いた。
酬いを受けただけなのだ。
もちろん、徹の不実を知った時からずっと、鼓膜の中でしつこく痛罵されている。
「せっかくスピード落としたのに、そんなことで捕まりたくはないな」
「ビビってんの? こんなイイ女がすぐ隣でサカってんだから、カバッと来いよ」
「べつにサカってなんかないだろ?」
「んーん、そんなことない。めっちゃ濡れてるよ」
鼻にかかった声を漏らし、より強く両手を動かす。ふくらみを円を描いて揉み、中心で勃ちあがっているはずの突起を探す。利き手の手首をももで挟み込んで、下着の上から狭間をなぞった。
アウディは冷静に、一定のスピードを保っている。自分たちを乗せ、ひたすら北へと向かっている。
「……ね」
紅美子は両手を止めた。
ふくらみはまったく凪ぎ、薄布はからからに乾いていた。
「気が済んだか?」
「……私さ、これから何しに行くんだっけ?」
そう呟くと、井上は勢いよくふきだした。
「おいおい、誰が言い出したのかも忘れたのか? 本当にむちゃくちゃだな君は。徹くんはよくこんなのと二十年も付き合ってる」
「そだね。……私、むちゃくちゃだ」
次に息を吸ったとき、胸下がひどく震えた。噴き出すものを抑えつけるように、紅美子は急いで顔を覆った。笑え、笑うんだと自分に言い聞かせても、手のひらが熱く濡れていく。
「……やだなぁ……、徹……、いなくなっちゃうのか……」
息を吐き出さなければ話せないが、うまく吐き出せず、胸が引き攣り、声が裏返った。言葉にしたい誘惑に負けてみると、とてつもない虚無が襲いかかってきた。
己の無力を嘆く幼な児のように、紅美子は声を上げて泣いた。
酬いを受けただけなのだ。
もちろん、徹の不実を知った時からずっと、鼓膜の中でしつこく痛罵されている。

