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爛れる月面
第5章 つきやあらぬ
 幹線道路へと入った井上が鼻から息をつき、

「ビービー泣いて心を入れ替えたかと思ったが、あいかわらずだな。君の頭の中では繋がってるつもりなのかもしれないが、聞いているほうはたまったもんじゃないぞ」
「思い出したの。私のことを、何とかタブーだって言ったの」
「しかもそれを思い出したとは言わない。……インセスト・タブーのことか」
「そうそれ。私たちのことが気持ち悪いって」
「そこまでは言ってない」
「きょうだいみたいだって、結婚にケチつけたじゃん」

 アウディはほとんど振動せず、マスカラやアイライナーを使っても、ブレることはなかった。元通りとまではいかないまでも、もともとキツい目の形に、威勢を張らせることはできそうだ。

「……あんときはほんとムカついた。なんであんなこと言ったの? 女の交換とかなんとか」
「愛人の結婚を邪魔するのは、ごく普通の男の行動心理だろ。何故タブーなのかは前に言ったとおりだ。結婚は女性の交換なんだから、身内の中でやってたら、その一族は社会に開かれていかない」
「でも、私と徹は実のきょうだいなんかじゃない。どう見たって普通の結婚だもん」

 赤信号で止まる。ふと見ると、シャッターが降ろされて暗いので見過ごしそうだったが、あのスーパーマーケットがあった。これから入ろうとしている農道も、自転車で走った憶えがある。

「なんでもかんでも訊くんじゃない」
「もったいぶらないで」

 一台も通らないまま、青信号に変わった。リップは諦め、化粧ポーチを仕舞い、井上の答えを待つ。左右に漆黒が広がっている農道を、アウディが薄情に疾走していく。カーナビの画面には「G」の文字が既に表示されていた。どの方向からも光はやってこず、虚しくウインカーをつけながら、山が近いことを物語る曲がりくねった道へと入っていく。

「……私、徹と、結婚してもいいの?」
「僕に訊くな」
「教えて」
「残念だが、もう着いた」
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