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爛れる月面
第5章 つきやあらぬ
 ニッコリ笑った老牧師が礼をする。紗友美が咳払いをして、

「やーっと花嫁が入場できました!」

 とマイク無しの大声で言うと、拍手が最高潮に達した。

「あんまり時間ないんで、賛美歌は省略! えーっと……」

 手元のメモを見て、

「じゃ、牧師さんからひとこと!」

 老牧師が微笑みながら、二人の前に立った。おもむろに、徹と紅美子のそれぞれを見て、

「サユミから聞いています。アナタがたは、幼い頃に出会い、ずっと一緒にいる。そうですね?」

 やっぱり徹は動かない。紅美子だけが頷くと、老牧師はうんうんと応え、

「ですから、ワタシはアナタがたにこの話をしたい。……キズナという言葉、知っていますね? 聖書にも出てくる言葉ですが、今からお話するのは、漢字の絆です」

 外国人の牧師は、二人の前の空中に「絆」という文字を書いた。半ではなく、八を使って正確に書く。

「漢字は素晴らしいですね。ひとつひとつの文字に、意味を持っています。ワタシは調べました。絆という字の、右側は『わかれる』という意味だそうですね。左側は、ロープ、『むすぶ』という意味です。つまり絆は、ばらばらになったものを束ねる、そういう意味でしょう。もともとは、家畜を逃げないように縛っておく、束縛するというあまりヨクナイ意味でしたね。ですが、悲しい地震があったとき、この国の人々は、いたわりあい、助け合い、不幸に立ち向かいました。それを人々は、絆と呼びました」

 老牧師は、徹と紅美子を手で指し示し、そして両手を使って紗友美や、二人の親たち、そして周囲の群衆も指し示した。

「もともと人間は、ひとりひとり、ばらばらなのです。これはイエスの教えと同じです。ワタシ達は、神の前では、ただ一人なのです。だからこそ、ワタシ達は絆を結び、共にありたいと願います。ここに愛の尊さがあります」
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