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爛れる月面
第1章 違う空を見ている
 ジュルッ、と音がした。
 こんなはしたない音を立てるなんて、されたことはなかった。

 仰向けられた徹の顔面へ腰で乗りあがっているような体勢になっていた紅美子だったが、もう膝が支えてはおれず、後倒して外に落ちないよう窓枠につかまりながら腰を下ろした。壁に凭れて座ると、投げ出された脚が開かされ、両手を使って肉果が割られる。暗がりの中でも、徹が自分を懇切に、丹念に舐めているのが見える。三週間ぶんの鬱憤は、ひと眠りしただけでは鎮まっておらず、その凄まじさに慄きながら、全身を浸されるような執着ぶりにとめどなく蜜が溢れた。これほどまで徹が荒々しいとは思ってもみなかったが、これほどまで、自分が潤ってしまうのも、知らなかった。

「指、入れてもいい?」
「うん……」

 徹らしくない。らしくないが、許した。

 紅美子のことを大切すぎるほどに扱ってきた徹は、外には触れてきても、体の内側へ触れてくることはなかった。徹を組み敷くことで充分に紅美子は潤うことができたし、いつか行ったラブホテルで流れていたアダルト動画のように、中を乱暴にかき回すなんてことは、徹のほうが忌避感を感じていたようだ。

 にもかかわらず、徹から言ってきたことが、嬉しかった。

 門を割って入ってきた指は、襞を優しく撫で、思わず狭めてしまう肉路を緩急をつけて往来した。腰がくねる。やがて手のひらを天に向けた角度で抽送しながら、クレヴァスの上端に顔を覗かせた雛先を吸われた。腰はくねるどころか、大きく弾んだ。

「……ね、徹。なんか……、あのね」

 曖昧に言う紅美子を、唇を狭間に施したまま、上目遣いに徹が窺ってくる。見つめ合っていられず、紅美子は両手で顔を覆った。指を、壺口が強く搾ってしまっているのがわかる。中も蠕動している。彼とは何度も交わってきたが、達したことはなかった。幼馴染とのセックスには、絶対に必要というわけではなかった。しかし、麗しそうな、同時に寒々しそうな、不思議な予兆を目の当たりにして、恋人としてのセックスには、必要だったのかもしれない、と思われてきた。いずれにせよ、率先して導こうとしてくれていることが、ものすごく嬉しかった。たまらなく恥ずかしくもあるが、彼に教えてあげなければ、という思いに衝かれ、

「いく、かも……」
「イケよ」
「んんっ」
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