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爛れる月面
第1章 違う空を見ている
「ここまでナマでさせてるんなら、もう手遅れだろ?」
「うくっ……、やめ、……や、……絶対いやだっ、……いやだっ!!」
「そんなことを知ったらなおさらだな。誰かさん、には悪いが……」

 奥地を圧し上げた直後、切羽詰まった喘ぎもなく、肉茎が弾んだ。間髪入れず、二度、三度と、脈動する。何かが、体に降りかかっている。今まで一度も味わったことのない、熱く、狂いそうな汁気が、腹の中に広がっていく──

 気絶できたらどんなに良かったろう。

 しかし井上が、すべてを吐き出した肉茎をゆるやかに往来させつつ引いていき、亀頭を門から外へと抜けおおさせるや、どろりと股ぐらから会陰へと滴が垂れた。井上と肉茎の先が、冷酷に見下ろしているのが目に入り、紅美子は跳ね起きた。

「……こ、……殺してやる……」
「手が使えないっていうなら、本当に咬み殺してきそうだな」

 怒り唸る紅美子を尻目に、ベッドを降りた井上は背後に回り、千切れんばかりに捻られていた手首を結うバスローブ紐の解き緒を引いた。

 両手が抜ける。
 しかし、飛びかかろうとヒップを浮かせたとたん、秘裂から更に溢れ出た粘液が内ももを伝った。

「……うあぁっ!」

 紅美子は身を翻し、ベッドを飛び降りると、途中躓いて腰を落としつつ、バスルームへと駆け込んだ。片膝でしゃがみ、蛇口を捻る。冷水のままのシャワーを下腹部に向け、自ら肉の扉を開いた。

「やだ……、や……」

 糸を引いてぶら下がる玉滴が水流を浴びて揺れている。流れ出てくる感覚が去り、陰裂の表面の粘液が洗われても、まだ内に不浄が残っている強迫だけは、いつまでも消え去らない。

「だから手遅れだって言ってるだろ」

 振り返ると、井上がバスルームの入口に全裸のまま立っていた。発狂じみた声を上げて手の物を投げつけたが、ホースに繋がれたノズルは派手な音を立て、虚しくタイルを転がっただけだった。棚に並べられていたボトルも次々と投げつけ、いよいよ何もなくなると、

「ぶっ殺してやる!!」

 あらためて、井上へと飛びかかっていった。

「めちゃくちゃだな、君は」

 掴みかかった紅美子の手首は、たやすく捻り上げられた。
 髪を掴まれて上向かされた次の瞬間、信じられない強さで頬を叩かれ、部屋の中へと転がされる。
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