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渇いた心に水を注ぐ
第12章 ようやく、初めての夜〜真由子
「真由子ちゃん、ごめんね?
何処かに行こうかと思ってたけど、
叔父さんの処でのんびりしちゃったね?
近場のホテルとかに行こうか?」


「ホテルに行きたいんですか?」


「いや、そういうわけじゃなくて…。
なんていうか、ロマンチックな夜にしたくて」


私は真紅の薔薇の香りを嗅ぎながら、
「これだけで充分、
ロマンチックですよ?
大好きな人からお花貰うのって、
本当に嬉しいです」と言うと、

「え?
それなら、毎日お花プレゼントするよ?」
と圭人さんが言う。


「毎日はダメですよ。
サプライズにならないし、
飾るところがなくなっちゃいます」とクスクス笑ってしまう。


「お夕食はどうします?
何が食べたいですか?」


「勿論、真由子ちゃん」と言って、
抱き締めてキスをするので、

「お風呂に入ってから…にしますよね?」と圭人さんを止めて、
スイッチを押しに行った。


「お腹、空いちゃいませんか?
あ!
お祖母様のくださったアップルパイ、
頂きましょうか?」と言うと、

「んー。
しょうがないな?」と笑う。


少しオーブンで温めてカットしてお皿に載せているうちに、
圭人さんがコーヒーを淹れてくれる。


テーブルについて、
仲良くアップルパイを食べた。


「レシピを教えて貰いたいな。
凄く美味しいですね!」


「レシピとか、無さそう。
子供の頃から同じ味だよ?
適当に作ってるんじゃないかな?」


「あら。
お菓子は結構、
分量が大切だから、
絶対にレシピ、ありそう。
頭の中にあるかもしれないから、
今度教えて貰います」


お風呂が沸いたという機械の音声が聴こえた。


圭人さんが立ち上がって手をひいてくれる。


「あっ。
食器だけキッチンに運んでも良いですか?」と言うと、
一緒に運んでくれるので、
私はざっと水で流してから食洗機に入れた。



「甘いの食べたから、
歯磨きしないとね?
先に行ってて?
私、持って行きたいものがあるから」と、
圭人さんを洗面所に促した。
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