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渇いた心に水を注ぐ
第16章 狂気から静寂へ〜賢人
梨香子に電話をして、
先日のことを詫びて、
お願いがあると言ってみた。


突然、警戒してるし、
電話を切られそうになるのをなんとか話を続けて、
真由子さんの服を買いに行きたいから、
サイズとか、アドバイスして欲しいと伝えた。


「ふーん?」と言いながらも、
「真由子ちゃんの為なら、良いよ」と言ってくれて、
日曜日に銀座のカフェで待ち合わせをした。


「先日は本当に済まなかった」と頭を下げると、
不思議そうな顔で僕を見ると、

「賢人さんでも謝ったりするんだね?
初めて見たよ」と笑う。


「で、なんで真由子ちゃんに?」と訊かれた。


僕は正直に、
先日の話をした。


黙って聴いていた梨香子は、
「なるほどね?」と頷いていた。


「本当にね、
真由子ちゃんは天使なのよ。
あたしなんかのことも気遣ってくれるのよ。
だから絶対に、傷つけないでよね」と言うと、
「じゃあ、服、買いに行こうか?」と立ち上がった。


真由子さんが好んで着ているというブランドのショップに入って、
「新作は?」と店員さんに訊いていくつか出して貰う。

梨香子のサイズを出し始めたのを止めて、
「違うの。
えっと、彼の弟のお嫁さんにプレゼントなの。
多分、ここ、よく使ってるかも…」と名前を出すと、
「あら!
真由子様ですか?
それでしたらサイズはこちらですね?」と言いながら、
「こちらがお似合いになりそうですね」と、
具体的に勧めてくれるものを、
梨香子は楽しそうに一緒に選んでいるのをぼんやり見ていた。


「こちらなら、マタニティになっても着れますよ?
ラップスタイルで調節出来ますから」と言われて、
ハッとしてしまう。

確かに、いつ子供が出来てもおかしくないだろうなと思った。


いくつか選んで貰ってる中から、
3着選んで包んで貰った。

最初、全部包んで貰おうとしたら、
「賢人さん、それはやり過ぎだよ。
自分でも選びたい楽しみあるから、
その分は取っておかないと。
ほら、圭人だって、
プレゼントで買いたいかもしれないでしょ?」と、
梨香子に止められた。


「梨香子も、選ぶの付き合ってくれたから、
何か買えば?」と言うと、
「じゃあ、仕事用のにしようかな?」と、
黒いワンピースを選んでた。

「そんな地味なヤツで良いのか?」


「ヘアメイクの仕事は、裏方だからね?」と笑った。


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