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渇いた心に水を注ぐ
第17章 砂漠の中のオアシス〜真由子
お正月はそれぞれの実家を訪問して過ごした。

「お兄様の処も行きましょう!」と言って、
圭人さんを引っ張って行った。


お兄様が見立ててくださったワンピースを着て出掛けると、
「良かった。
サイズ、ちょうど良いみたいだね?」と言いながら、
お兄様は少し眩しそうな顔をする。


圭人さんが子供みたいな顔で、
ちょっと膨れて、
「なんだよ?
兄貴、ズルいよ。
真由子ちゃんにプレゼントとかしてさ」と言うと、

「なんだ、圭人。
真由子さんにプレゼント、まだ、してなかったのか?」と、
面白そうな顔をして、お兄様が笑ったのを見て、
お義母様も声を上げて笑った。


「プレゼントと言えば、
パリで買ってきてくれたネクタイ、
看護婦達に評判良いんだよ。
若返ったって…」


「あら、嫌だ。
鼻の下、伸びてますよ?」と、
お義母様が言うと、
お義父様が顎の下を掻いた。


「圭人さんもお兄様も…
お義父様の癖がそのままなんですね?
ほら、顎の下、掻いてる」と言うと、
3人で顔を合わせて笑った。


「私、エステの経営、譲渡しようと思ってるの。
家でのんびりするのも良いかなって思って」


「えっ?
することなくて、
すぐに飽きるんじゃない?」


「ほら、パパだってずっと忙しかったから、
賢人に病院任せて、
2人で旅行とかしたいわ。
まあ、料理は出来ないけど」と笑う。


「お2人とも、引退されるのはまだまだ、
早そう!
でも、仲良くのんびりご旅行は、
楽しそうですね?」


「その分、賢人には頑張って貰わないとな。
圭人も、経営、手伝って欲しいけど」


「僕からも頼みたいな。
今の仕事の一部で良いから、
うちの病院の経営、手伝えないかな?
叔父さんの事務所に報酬払えば良いだろ?」


「んー。
その話は、叔父さんとしてよ?
俺、雇われの身だからさ」


「なんとなく、行くのが嫌だった実家も、
真由子ちゃんと一緒なら嫌じゃなかった」と、
圭人さんは子供みたいなことを言う。


その後、お互いの家を頻繁に行き来するようになった。

お祖母様とお義母様の溝のようなものも、
少しずつ埋まっていったようだった。


アップルパイを手土産に楽しそうに帰るお義母様は、
まるで少女のようだった。

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