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渇いた心に水を注ぐ
第5章 修羅場は突然に〜圭人
でも、とにかくゆっくり進めていきたい。
大切にしたい。


そんな気持ちが強かったのか、
その日は額にキスをして、
気合いでソファから立ち上がった。


「そろそろ帰るね?
そうしないと、
ここで寝ちゃいそうだから」
と言った。


「えっ?」
と言うと、
「ちょっと待ってください」と言って、
急に真由子ちゃんはキッチンに行ってしまう。


なんだろうと思ってたら、
バンダナに包まれた四角いものを紙袋に入れて俺に渡してくれる。


「梅干し、食べれますか?
この時期だと、傷んでしまうの心配なので…」と言って、
「お握りです。
明日の朝ご飯にどうぞ」とニコニコしてる。


「だって、カップ麺とかパン食べてるって言ってたから」


「うわ。
お弁当とか、何年振りだろう?
真由子ちゃん、ありがとう」


「お弁当ってほどのものではないですよ」


「なんか、帰りたくない」と、
真由子ちゃんを抱き締めてしまう。


「でも、ダメだ。
俺、絶対に真由子ちゃんを大切にしたい。
だから、
だらしないこと、したくないしな。
今日は付き合ってくださいと申し込んだ日だ。
次は、プロポーズして、YESって言って貰えるようにしないとな」


「圭人さん?」


「えっ?
何?
俺、なんか舞い上がって変なこと、言ってる?
キモい?」


「そんなことないですよ。
えっと…。
私、圭人さんみたいに優しくて安心して一緒に居られる方、
初めて会いました。
これって…、好きってことなのかも…」


「えっ?」


「お話するのも、殆ど緊張しないし、
えっと…こうやって近くに居ても、
手を繋いでても、
ハグして貰っても、
キスして貰っても、
怖くないし、ほんわかした気持ちになれます」


「なんか、俺、泣きそう」


「圭人さん、
でも…」


「でも、何?」


「お髭、くすぐったいです」


「えっ?」


「あと…
やっぱりキス以上のことは、
ちょっと怖いかも…です」


「髭、くすぐったいのか。
それがまた、良いのかもよ?
いや、俺、何言ってるんだ。
そうじゃなくて、
勿論、怖いことはしないよ?
…でも、止まらなくなることもあるかもしれないからな。
なるべく、極力しないように努力するよ。
だから、とにかく今日はこれで帰るね?」


そう言って、
わざとくすぐったいと言ってた頬にキスをした。
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