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渇いた心に水を注ぐ
第5章 修羅場は突然に〜圭人
「何か、手伝う?」と言うと、
「ランチョンマットを敷いて、お料理を運んでください」と言われる。

キンメの干物はふっくら焼けてて、
大根おろしが添えてある。

ほうれん草のお浸しと切り干し大根とカボチャと小豆の煮物、
それに浅漬けの小鉢。
具沢山のお味噌汁とご飯。

「凄いご馳走だな」と心から感心して言うと、
「常備菜とか、早く出来るモノばかりですよ」と笑う。

「ビールとかお酒は無いので、
麦茶で良いですか?」と言われて出されたのは、
多分でちゃんとヤカンで煮出したやつ。

「美味しい美味しい!」とバクバク食べて、
「あっ。
ごめん。
また、早食いしてるな」と言うと、
楽しそうに笑ってくれる。

食後は一緒に食器を下げて、
食器洗いするのを見てたら、
「恥ずかしいから、あっちに居てください」と笑われてしまう。


「コーヒーはマシンで淹れるのしかないけど、
それで良いですか?」と言われたので、
「それくらいなら、俺がやるよ?」と言うと、
「ダメです。
素敵な温泉プチ旅行のお礼のご飯なんだから、
私にやらせてください」と言う顔がまた可愛くて、
なんか、もう俺はすっかり骨抜きになっていた。

ソファでのんびりコーヒーを飲む。
真由子ちゃんは猫舌だからなのか、
牛乳を入れてるみたいだった。


「シャンプー、毎日おいで?
凝り固まった頭も首も肩も背中も、
マッサージしてあげたいし。
学校の帰りに寄ってたんだよね?
その時間、仕事で居ない日もあるかもしれないけど、
そんな時はここに来てシャンプーするよ。
ちなみに来週は…」と、携帯のスケジュールを出してみる。

「んー。
水曜日が夜、仕事だな。
遅いかも」

「毎日だと…あの…」

「ん?
何?」

「私に飽きちゃうと思いますよ。
私、本当につまらないもの」

「そんなことないよ。
っていうか、何も話なんかしないで、
こうやって一緒に居るだけでも、
俺、幸せだなって思うよ。
だから本当は…毎日一緒に居たいな。
俺の方こそ…
ガサツで適当で、
仕事の時間とかも不規則で、
真由子ちゃんに嫌われないかなって思うよ」と、
口にしてしまう。


「じゃあ、お互いにもう少し判り合えるように、
会う時間、作りましょうね?」と言われて、
俺は中学生男子並に舞い上がった気持ちになってしまった。

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